こんにちは、香料業界で10年以上働いているフィグです。
オレンジの精油(オレンジオイル)は天然品のため、入手できる数量に限りがあります。
オレンジオイルの主な産地はどこでしょうか?
それはブラジルです。
2020年頃まではアメリカも主な産地でしたが、近年は減少しています
ブラジルは世界の半分以上を占め、圧倒的な数量です。
オレンジ自体の生産量や用途を知ることから始め、オレンジオイルの産地を知っていきましょう。
ここでのオレンジは日本のみかん(温州ミカン)とは違います。温州ミカンはマンダリンオレンジであり、タンジェリンの部類です。
目次
1.収穫時期はいつ?
図1 収穫時期
緑色のところが収穫する時期を表します。
- アメリカ:10月~5月
- ブラジル:5月~12月
アメリカは北半球にあり、ブラジルは南半球にありますので、収穫する時期が逆転しています。(北半球と南半球では季節が逆になります)
このような収穫時期を示した表をクロップカレンダーといいます。
まずは、世界のオレンジ自体の生産量を見てみましょう。
2.世界の生産量はどのくらい?
世界の生産量は増加している?減少している?
図2 世界の生産量推移 [※1]
世界の生産量:約5,000万トン
世界の生産量はやや減少しています。その主な原因はアメリカにおける生産量の減少です。
図3 アメリカの生産量推移 [※1]
2008年に800万トンあった生産量が2022年には200万トンまで減少しています。(約4分の1まで減少しています。)
次に各地域における生産量の割合を見てみましょう。
生産量が多い国はどこ?
図4 世界の生産量における地域別割合 [※1]
順位 | 国・地域 | 割合 |
1 | ブラジル | 35% |
2 | 中国 | 16% |
3 | EU | 12% |
4 | メキシコ | 9% |
5 | エジプト | 7% |
生産量が多い国はブラジルです。ブラジルだけで世界の35%を占め、上位5つの国・地域で約80%を占めています。
地図とともに生産量を見てみましょう。
地図で見る生産量の多い国はどこ?
図5 世界の生産量における地域別割合(地図) [※1]
北アメリカ(アメリカとメキシコ)と南アメリカ(ブラジル)の生産量は世界の約半分を占めます。
地図から、生産地の場所をイメージできると役に立つことがあります。
3.オレンジの主な用途は何?
図6 果実の用途先
オレンジの用途は青果用と加工用に分かれます。
- 青果用(市場でまるごと売る用です)
- 加工用(ジュースやオイル用です)
そして、果実の主な用途は青果用に使われます。
世界では青果用にどれだけ消費されているか見てみましょう。
世界で青果用の消費量は増加している?減少している?
図7 世界の消費量推移(青果用) [※1]
世界の消費量(青果用):約3,000万トン
青果用においては、過去と比較すると世界の消費量は横ばいです。
次に各地域における消費量の割合を見てみましょう。
青果用として消費量が多い国はどこ?
図8 世界の青果用消費量における地域別割合 [※1]
順位 | 国・地域 | 割合 |
1 | 中国 | 25% |
2 | EU | 18% |
3 | ブラジル | 16% |
4 | メキシコ | 8% |
5 | ベトナム | 5% |
青果用として消費量が多い国は中国です。中国だけで世界の25%を占め、上位3つの国・地域で50%以上を占めています。
地図とともに消費量を見てみましょう。
地図で見る消費量の多い国はどこ?(青果用)
図9 世界の青果用消費量における地域別割合(地図) [※1]
アジア(中国とベトナム)30%と南北アメリカ(アメリカ、メキシコ、ブラジル)28%が同じぐらいの消費量を占めています。
もう1つの用途である加工用を見てみましょう。
4.オレンジの副次的な用途は何?
図10 果実の用途先
果実の副次的な用途として加工用に使われます。
- 主産物:ジュース
- 副産物:オイル
加工用の果実は、主にジュースを得るために使用され、ジュースを作るついでに、皮からオイル(精油、エッセンシャルオイル)が得られます。
メインはジュースで、オイルは所詮、副産物なのです。
優先順位は「果実>ジュース>オイル」です。
ジュースを飲みたい人(需要)が減ることは、ジュースの生産量が減り、オイルの生産量も減ることにつながります。
青果用の果実は加工用には使えないことがポイントです。そのため、オレンジオイルの生産量を知りたいときは、加工用でどれだけ消費されたかを知る必要があります。
世界では加工用にどれだけ消費されているか見てみましょう。
世界で加工用の消費量は増加している?減少している?
図11 世界の消費量推移(加工用) [※1]
世界の消費量(加工用):2,000万トン弱
加工用においては、過去と比較すると世界の消費量はやや減少しています。
次に各地域における消費量の割合を見てみましょう。
加工用として消費量が多い国はどこ?
図12 世界の加工用消費量における地域別割合 [※1]
順位 | 国・地域 | 割合 |
1 | ブラジル | 70% |
2 | メキシコ | 10% |
3 | アメリカ | 6% |
4 | EU | 5% |
加工用として消費量が多い国はブラジルです。ブラジルだけで世界の70%を占めているので、ジュースやオイルの主な産地はブラジルです。
地図とともに消費量を見てみましょう。
地図で見る消費量の多い国はどこ?(加工用)
図13 世界の加工用消費量における地域別割合(地図) [※1]
南北アメリカ(ブラジル、メキシコ、アメリカ)で世界の約85%を占めています。
青果用の消費量は中国が多く、加工用の消費量はブラジルが多いです。生産されたオレンジ果実を青果用と加工用のどちらで消費するかは、国や地域によって異なります。
それでは、各国・地域における生産量のうち青果用と加工用の消費割合を見てみましょう。
5.各国・地域の加工用として消費する割合はどのくらい?
図14 国・地域の生産量における青果用と加工用の消費量割合 [※1]
円グラフにおいて、色は用途の割合を示し、円の大きさは生産量を表しています。
オレンジ :青果用
ブルー :加工用(ジュース、オイル)
円の大きさ :生産量
中国とEUはほぼ青果用であり、メキシコとアメリカは加工用の割合が約40%です。一方、ブラジルは加工用の割合が70%を超えています。
オイルの生産量を知るには、果実の生産量だけではなく、加工用にどのくらい消費されているかを知ることが重要です。
6.まとめ
- オレンジオイルの主な産地はブラジル
- 世界の生産量は減少(特にアメリカの生産量が減少)
- オレンジ果実は青果用と加工用に分けられる
- 青果用の果実は加工用には使えない
- オレンジオイルは加工用から得られる
- 国・地域で青果用と加工用の割合が異なり、メキシコとアメリカでは約40%、ブラジルでは約70%が加工用に使用される